マナウスの侍 アマゾンの空 白と黒の河 ピンクイルカ

平成28730日@マナウス
 午前中の静かな講堂に響き渡る気迫のこもった声。
 静かに道着を着て、竹刀を床においた。
 顔立ちは明らかに白人風。イタリア人のような整った風貌。
 ここは明らかにアマゾン川の中流域、マナウスである。
 講堂を出入りする時には、正面に飾られた書に向かって礼をする。もちろん、オブリガードではなく、「ありがとうございました」だった。
 僕はこんなんでも中学校の時には柔道部で、これと同じようなことを先輩や顧問の先生から習った。礼に始まり、礼に終わる。練習は畳の上で座礼をすることがから始まっていた気がする。中学時代の体育館の風景が思い出された。
 まさか、アマゾンの奥の大都市で、武道に心動かされると思っていなかった。壁面には、仁や武といった漢字が「かっこよく」飾られていて、その講堂は、日本人ではない侍の気迫で満ちている。映画のようだった。しばらく見入ってしまった。
 ブラジル人が日本の文化に親しみを持っていることは、この旅でほんとうによく分かった。
 日本の文化には力がある。アニメやマンガから入る若者は多いそうだが、そのうち、日本の精神性に惹かれていく人も多い。
 最初は、お金のために、将来身を立てるために、日本語を勉強しているのかと思っていたが、それだけのためとは決して言えない。日本文化がもつたくさんの価値が、日本語の中に凝縮されている。
 今日は、アマゾン河に行った。
 やっぱり僕は空が好きだ。ジョギングをしていても、空が広く見える場所を選んで走っているし、旅行先でいつも印象に残るのは、空の広さや空の色だ。
 オランダの空は青かった。高低差がほとんどないオランダの土地は、本当に広く見えた。そして、色が濃い。厳しい冬を乗り越えて、つかの間の夏を祝うかのように、色の濃い青空が日本よりも高く感じた。
 アマゾン河の空は、透き通った水色だった。目の前には、人工物は何もない。護岸工事もされていない。隆々たる入道雲がそびえ、水面は驚くほどの静かだ。波が全く無い。お皿の上に張られた水のように、平面だった。
 僕らの船は、日本でいう屋形船ぐらいのサイズ。けれど、モーターが強力なのか、かなり速いスピードではしってくれる。風で会話ができないぐらいだった。
 そのモーター船で広い河を突っ切って行く。広い画用紙にのびのびと線を描くように、船は進んでいく。障害物は何もない。
 河であることを疑うぐらい、対岸が遥か彼方にある。マナウス側には、背の高いビルがつんつんと見える。反対側は手付かずに自然。むき出しの崖や、マングローブを想像させるような半分水に浸かった木が見える。仲間が「今の世界を表しているね」と言った。都市と自然のブラジルか、それとも、格差社会の世界を例えたのか。会話が殆どできないので、詳しく聞きたかったが、聞き流さざるを得なかった。
 世界は本当に広いが、空は必ずつながっている。シンプルだけど、そこに美しさを感じる。家から見える空も、今は閉鎖されてしまった海軍道路の空も、オランダの青い空も、アマゾンの広い空も。
 
 冷たく白く濁った水と温かい黒い水が合流する地点は、温度のちがいで水が混ざり合わない。河の真ん中で、白と黒の河が2色のゼリーのようにくっきりと分かれていた。船から手を伸ばして水面を触ると、はっきりと温度のちがいが分かる。明らかに白い部分は冷たく、黒い部分は温かいのだ。

 黒い河にいるピンクイルカは、はっきりとピンク色をしているとは言えなかった。でも、河にイルカがいることはたしか。餌を欲しがって、水面からちょこっと顔を出すところがかわいい。時折、上半身を水面から出して、水しぶきをあげていた。


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