『学習する組織』を読み始めます。書くことで、理解を進められるようにしたいと思います。
最初に本のカバーを取ると、原書のタイトルが書かれています。
『The Fifth Discipline / The Art and Practice of the Learning Organization』
邦題と全然違いますね。Disciplineは規律というよりも、「理論と手法の体系」と筆者は言っています。それでも『学習する組織』よりも厳格な内容に聞こえますね。
学習する組織 第1部 いかに私たち自身の行動が私たちの現実を生み出すか……そして私たちはいかにそれを変えられるか
第1章 「われに支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
最初から、学習する組織のための5つのDisciplineが登場します。
- システム思考
- 自己マスタリー
- メンタル・モデル
- 共有ビジョン
- チーム学習
システム思考とは、ざっと言うと、自分達の意識が行き届きにくい事象の全体を捉えることで、相互に関連する影響を丸ごと含めて思考すること。後のビール・ゲームがわかりやすい。
自分の仕事の領分を再定義する
たとえば、私たち教師の仕事は「学校で子どもの力を伸ばす」と捉えると、子どもの家庭での過ごし方については、自分達の仕事ではないと捉えたり、そもそも把握できないから自分達の仕事の領分ではないと認識したりする。しかし、家庭での過ごし方は、子どもの学校での過ごし方に直結するし、情緒面で大きな影響を及ぼすので、本当はそれを見過ごすことはできないが、自分達の仕事の領分を規定してしまっているので、そこに影響を及ぼそうとする思考が生まれない。自分の仕事が及ぼす範囲を、もう一度再定義して、新しく捉え直す考え方が、システム思考であると、トミーは解釈しています。
第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか?
組織の学習障害の定型を7つ紹介しています。
- 「私の仕事は〇〇だから」と職務ばかりを語り、その目的については語り合わない。
- 「悪いのはあちら」と自分の職務だけに焦点を当て、自分以外の誰かのせいにする。
- 「先制攻撃」は、積極的に見えて実は受け身で、自分が自分の問題をどうやって引き起こしているかを考えようとしない。
- 「出来事への執着」はその背後にある長期的な変化のパターンに目を背け、そのパターンの原因を理解することを妨げる。
- 「ゆでガエルの寓話」のように、徐々に進行するプロセスに組織が気付きにくい。
- 「経験から学ぶ」とは言うが、最も重要な意思決定は直接経験することができないことばかり。経験が邪魔をすることも多々ある。
- 「経営陣」は、イメージを保つために意見の不一致を揉み消そうとする。骨抜きにされた妥協案か、一人の意見がグループに押し付けられた案に過ぎない。
学校にもある組織の学習障害
学校にも当てはまるものが多く、ドキリとします。「私は地域部だから」とか、「管理職が悪い」とか、学校の目的を考えようとしない傾向はあります。「経営陣」も、意見の調整に時間をかけてしまう組織構造があります。最近ではそれも見直されてきて、しっかり「不一致」を共有しようという動きもあり、自分も頑張りたいところです。
第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か?
この章で大きく取り上げられているのが、ビール・ゲームというものです。ビールは泡の出る大好きなあれです。小売業者と卸売業者、そして、ビール工場の役割に分かれて、それぞれの立場で生産・流通を円滑にして会社を運営しようと努めるゲームのようなものです。「貿易ゲーム」などのイメージに近い、研修などで取り扱われそうなゲームだと想像しています。
最初は順調にビールは3社を流れて流通していきます。ところが、ある週から、突然、ある銘柄のビールの受注が通常の2倍に増えていきます。在庫では対応できなくなった小売業者はこれからもどんどん受注が伸びると判断し、卸売業者に発注を次々とかけます。しかし、その小売業者のみの現象ではないため、卸売業者の在庫も尽きます。卸売業者は在庫を確保するために、ビール工場に大型の発注をかけます。ビール工場は生産ラインを増築して対応して、卸売業者の受注に応じようとします。
そんなにすぐには生産が追いつかず、注文をしても全く来ないビールのケースに急かされて、小売業者も卸売業者も、通常の3倍、4倍とどんどん発注してしまします。これが大混乱の前兆となります。
生産ラインが増築されて、3倍、4倍のビールが一度に手元に届くようになると、在庫が余ってしまいます。突然在庫を抱えてしまった小売業者は、発注は緊急にストップ。その構造と同じように、卸売業者も工場への大量の注文をストップ。しかし、一度工場の生産ラインを増やしてしまったからには、そんなにすぐには止まりません。小売業者も、卸売業者も、ビール工場も、在庫を大きく抱えることになり、大惨事になってしまいます。
そして、3社ともこういうそうです。「私たちは悪くない」
実はこのゲームの裏は至ってシンプルで、最初の週の消費者需要だけが通常の1店舗につき4ケースで、次の週から8ケースになるだけで、ずっと消費者受注は8ケースのまま変わらないのですが、プレイヤーたちの憶測が憶測を呼び、ビールの生産流通は大混乱に陥ります。
ビール・ゲームの教訓
- 構造が挙動に影響を与える
- 人間のシステムにおける構造はとらえにくい
- レバレッジは往々にして新しい考え方によってもたらされる
1、ビール・ゲームのビールの流通構造自体が、問題を孕んでいるのに、3社がお互いに誰かや何かのせいにして、構造自体に目を向けることをしない。同じシステムの中に置かれると、どれほど異なっている人たちでも、同じような結果を生み出す傾向がある。
2、構造を外的な制約と考えがちだが、三者間の相互関係が複雑に影響しあってできている。
3、3社とも外部の不安定性(顧客のビールの注文増加を含む、自社以外の注文など)を自らの力で安定させる力を持ちながらも、自分達の意思決定ばかり着目し、その決定が他の人にどのような影響を及ぼすかまで考えることができない。
ビールゲームで失敗しないようにするためには、システム思考が必要ということです。つまり、本来自分達の影響下にあると思われている範囲を広げて、システム全体に目を向ける必要があります。小売業者は、自分達の決定がどのように卸売業者や工場に影響を与えるかをイメージしなければならないし、卸売業者や工場も自分達の決定がどのように他者に影響を与えるかを考えなければなりません。注文を2倍、3倍にする前に「アスピリンを2錠飲んで待つ」という言葉でまとめられています。
ビールは不安とも置き換えられるか
このビール・ゲームのビールの受注数。これを、子どもや保護者のニーズ、もしくは、不安と考えると、システム思考がまだ何もわかっていないですが、僕は色々なことを想像してしまいます。不安は低い方へ低い方へと流れていきます。そのシステム全体を見渡して、自分達の意思決定をしていかないと、自分達の不安を解消するだけの対処療法を行うだけで、まったく改善しません。学校も、先生も、子供も、保護者も、みんなが不安を取り除き、ビールゲームでいう「成功」や「改善」をしないと、良い未来は見えないのだと思います。
さて、第二部へ。第二部では、システム思考がさらに深掘りされていくようです。
コメント