『学習する組織』を読んでいます。完全に自分のために書いています。
「書かなければ、残らない」という考えのもと、頭に浮かんだことや残したいものを焼き付けています。これを書くことによって、再読にもなっています。『読書家の時間』の「意味を作り出す」の作業をしているわけです。作家ノートを書くプロセスでもあります。
第2部 システム思考 「学習する組織」の要
第2部の僕の考えです。
システム思考を使って問題状況を俯瞰し、似たような原型モデルを当てはめながら、自分の置かれている状況のレバレッジ・ポイントを見つけるという思考になります。レバレッジは、本当に見えにくいことがよくわかりました。安易な解決策が、本質的であるとこれは、一人では難しいなあ。職場の仲間たちと問題状況の明確化や焦点化でさえ、なかなかに難しいのに、それに対するレバレッジについても深掘りしていくことが、まだ自分に関して言えば、絵に描いた餅です。
ただ、学校間で問題状況は似ていると思うので、システム思考を活用しながら横のつながりを使って、みんなで問題状況を改善していくことが良いように思います。学校の内側と外側でコミュニティを強化していくのが実は着実な問題解決であるように思います。
一人でシステム思考の言語を使っても仕方がないので、多くの人にシステム思考を理解して貰えば、この言語を使っての問題解決も進むかもしれません。みなさん、ぜひ読んで。
第4章 システム思考の法則
この章は、システム思考を表す金言を取り上げて解説しながら、システム思考の全体像を外観できるようにしている章のようです。
今日の問題は昨日の「解決策」から生まれる
絨毯の膨らみを踏みつけても、他が膨らむだけ。踏み続けていると、ボロボロになる。
強く押せば押すほど、システムが強く押し返してくる
相殺フィードバック(第5章・第6章のバランス型フィードバック)について。ボクサーという馬が一生懸命に働けば働くほど、やるべき仕事が増えていき、農場を支配している豚が利益を得ていく寓話。
豚の話はともかく、バランス型フィードバックは学校界隈にはありそうな話ですね。やればやるほど、ある面での成果が減っていく。
挙動は、悪くなる前に良くなる
だから、「遅れ」があるので、バランス型フィードバックは見えにくい。
安易な出口はたいてい元の場所への入り口に通ずる
「学力が下がったから、授業時間を増やす」的な思考
治療が病気よりも手に負えないことがある
急がば回れ
物事には最適な成長率がある。学校はおそらく、極めてゆっくり成長することが最適なのかもしれません。
原因と結果は、時間的にも空間的にも近くにあるわけではない
ビール・ゲーム(第1部のメインテーマ)の困難の根源は、私たち自身である。
私たちの学校には、確実にこれが当てはまる。「子どもが」「家庭が」と良く言うが、それに合わせて何をするかが私たちの仕事です。嫌いな言葉は「私たちのやってきたことは間違っていなかった」ですね。先生個人の能力を高めるのはゆっくりじっくりで、学習の枠組みを変えていくのは、組織の力が必要に思います。そう思うとやはり、私たちにできることは大きい。自分たちの裁量にしっかり誇りを持たなければならないと思います。それがまさに、エイジェンシーかと。
小さな変化が大きな結果を生み出す可能性がある が、もっともレバレッジの高いところは往々にして最もわかりにくい
システム思考では、小さなマトを絞った行動を正しい場所で行えば、持続的で大きな改善を生み出すこともあり得る。この原則を「レバレッジ」という。
ケーキを持っていることもできるし、食べることもできる が、今すぐではない
真のレバレッジは、二者択一ではない。長期にわたって、いかに両方を改善できるかをみることにある。
一頭のゾウを半分に分けても、二頭の小さなゾウにはならない
システム全体を見よう。
私たちが学校と捉えている範囲は、ゾウの比喩で考えるのならば、頭しか見ていないのかもしれません。
誰も悪くはない
全てのものは切り離された他者ではなく、一つのシステムの一部である。
第5章 意識の変容
綿密な戦略計画も、予測ツールも経営分析も、多くの変数があるタイプの「種類による複雑性」を扱うように設計されているが、「ダイナミックな複雑性」を理解する必要があるとのこと。前者は因果関係が線形の形で表されるが、後者は相互関係であり、フィードバック・ループで示し、円環で表現される。
僕はこれを読んで、種類による複雑性は、指導案などで表されるタイムライン的な表現方法が思い浮かびました。ダイナミックな複雑性とは、子どもたちひとりひとりの相互作用を含む様々な要素が関係し、場を俯瞰して捉えなければならないと言うことだと思います。僕も学生の時に、グループダイナミクスなる概念と出会いました。また、フローラ(植物相)という概念も、このイメージを支えています。
フィードバックとは、相互に与え合う影響の流れを意味する。俯瞰した時に、どちらの方向に流れているか、右の流れもあるし左の流れもあるけれど、全体をみると大きなうねりになっているとか、そういう漠然としたイメージを持っています。
「自己強化型フィードバック」と「バランス型フィードバック」と「遅れ」
自己強化型フィードバックは加速度的に成長するか、または減退するかという挙動になる。軍拡競争における武器備蓄総量や、マナティー研究所で言えば、カメルーンの湖で外来種の水草が大量発生するプロセスのことです。
一方で、バランス型フィードバックは、目標や目的など、何かの水準を維持しようとバランスを取ろうとするものです。体温を維持しようとすること、僕の場合であれば、どんなに残業を減らそうと思っても45時間を下回らないみたいな、仕事のバランス感覚でしょう。いろいろなものが、バランス型フィードバックによって、保たれていますが、見えにくいもので気づかれることはあまりありません。
「遅れ」は、アクションを起こした後、結果が出るまでに、タイムラグがあると言うこと。ハンドルの「遊び」ともいうんだろう。
この3要素が、システム思考の基本要素。
第6章 「自然」の型 出来事を制御する型を特定する
第5章の3つの要素を組み合わせることによって、システムの原型ができる。全部で12個。第6章では、そのうち2つを取り上げて解説しています。
原型① 成長の限界
鰻登りに成長していたものが、成長が鈍化してある水準で停滞する型。自己強化型プロセス(なぜフィードバックではなくなった?)とバランス型プロセスの組み合わせで説明される。ハイテク産業は新製品を導入し急速に発展するが、それに伴って人員が増強されると、やや遅れてマネジメントが負担になり、製品開発に時間を要するようになると、新製品の開発に時間がかかるようになり、成長は鈍化する。
自己強化型プロセスがアクセルの代わりになり、バランス型プロセスがブレーキの役割を果たしている。2つの円環が並列になり、成長のスピードを緩めていく。
レバレッジは、バランス型ループの中にある。例えば、新製品を開発するために資金力を高めても、一時的に改善はするものの、成果は限定的である。マネジメントの改善を行うことで再び成長は加速する。
原型② 問題のすり替わり
問題を改善するために、対処療法的な解決策を用い、幾分かは症状が改善するが、結局それは根本的な解決策ではない。善意に満ちた少しの改善が長期的には状況をさらに悪化させてしまう。例えば、広告という解決策を使って収益が多少改善したとしても、それにより根本的な新製品の開発に対して問題解決する機会を失うことになり、広告費を増やす(自己強化型プロセスとして広告費は増大する)という対処療法的な解決策に依存していくことになる。新製品の開発には遅れを伴うが、そこに着手することがレバレッジのポイントになる。
企業の成長が広告費によってなんとか維持され(バランス型)る一方で、新製品の開発は同じように同じ水準に留まる(バランス型)。広告費を支出しないと企業の成長が維持できないという構造が生まれ、広告費はどんどん増加していく(自己強化型)。問題のすり替わり構造は、2つのバランス型プロセスと1つの自己強型プロセスによって表現される。
レバレッジは当然、問題の本質の方を改善することと、対処療法の改善策を弱めること。本質的な問題には遅れが生じるので、長期的な方向性と共有ビジョンが必要になる。
自分に身の回りにある問題をシステムの原型に当てはめて考える
結局、ここが一番大切。システム思考を学んだ学校関係者同士が意見を重ねて、何かの問題に対してシステム思考の図を作ってみるのは面白そうです。レバレッジがどこにあるのか、問題状況とシステム思考の原型図を共有することで、改善策をシェアできそうです。
第7章 自己限定的な成長か、自律的な成長か
ワンダーテック社の問題解決を例に、自己強化型プロセスとバランス型プロセスを使って、ワンダーテック社の問題の全体像を示している章です。確かに、一部の問題ばかりに注意力を取られていると、この問題に気づくことができません。「木も見て森も見る」と表現されていますが、その通りです。
ワンダーテック社は、受注量と生産能力をコントロールすることで売り上げを伸ばしてきました(自己強化型プロセス)けれど、受注量が頭打ちになるとセールや販売促進、プロモーションなどを行い、売り上げを回復させてきたが、実のところは納期の遅れで顧客満足度が低下することにレバレッジがあり、そこを改善しようとするスタッフはいたものの、納期の遅れを改善するためには時間の遅れが生じたり、セールや販売促進が功を奏していたことで、その意見は経営幹部に重要視されない状況になってしまう。
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