和太鼓指導者蓑輪敏泰さんは、10年にわたってブラジル全土の和太鼓の指導を行ってきた人だ。今日は「和太鼓のペレ」と呼ばれているこの方に、刺激的な話をもらうことができた。
ブラジルでは、日系社会を中心に、和太鼓がとてもブームになっている。和太鼓の叩いたときの開放感や迫力のある動きもさることながら、子どもたち(ジュニアは18まで、シニアもある)を和太鼓チームに通わせる保護者が期待することは、その精神性にある。
ブラジル人は日本人とちがい、時間やマナーにはルーズであるようだ。時間に遅れてくる者やドタキャンをする者、ピアスや刺青、サングラスなどをして練習場に入ろうとする者。蓑輪さんは、そのような若者に対して、厳しく指導をする。
12の約束というものがある
1. 練習場、発表会場の入口では、黙礼をして入る。(退場も)
2. 上記の人に対して挨拶を徹底する。
3. 練習場でも発表場でも「礼」に始まり、「礼」に終わる。
4. 練習場でも発表場でもそれにふさわしい服装、身だしなみをする。(イヤリング、ネックレス、入れ墨、携帯電話、ゲームの使用禁止)
5. 指導者やリーダーの言葉をよく聞き、活発(早くスピーディーに)に行動する。
6. 練習エリア、ステージ等では飲食をしない。
7. 時間を守り、与えられた時間を有効に使い、他に迷惑かけない。
8. 遅刻、欠席は必ず、指導者またはリーダーまたは代表者に理由を添えて、前もって連絡する。
9. 練習中のトイレ、水分補給は原則として休憩中のみ。
10. 自分でできる仕事は積極的に動く。(太鼓の出し入れ、配置等)
11. 太鼓やバチは、自分の身体の一部と考え、大事に扱う
12. 仲間との友愛を深め固く団結したチームを作る。
まさに「太鼓道」。太鼓を通じて、精神性を高めていくことを、子どもたちもその保護者も望んでいるのである。
さて、チームビルディングの一つの形を見せていただいた。ブラジルというまったく日本とは異文化の世界に入っていて、チームとして力を合わせなければならない和太鼓を広めようというのだ。日本で指導するのとはわけが違う。ブラジル人とも、幾度もすれ違いや葛藤があったはずである。
けれど、自分が信念をもって伝えられる日本の精神性を、和太鼓を通じて子どもたちに妥協なく伝えていく強さに、本当に刺激を受けた。
自分はどうだろうか。
自由と規律。創造性と継承。多様性と整然として整った美しさ。
二者択一ではないが、子どもたちを良いチームとして成長させていこうとするときに、自分はこれほどまで自信や信念をもって、子どもたちを前にできているのかどうか。
自分はおそらく、自由の中でも責任をもち、創造性を発揮して、多様な個性を発揮できるチームを理想としている。それは、蓑輪さんが考えるチームとは違うけれども、おそらく、ゴールは同じところにある。子どもたちの成長だ。
価値観は違っていい。それは当たり前のことだ。プレセスは多様にある。すべての指導者が、さまざまな手法を使って、子どもたちに成長を促せばいい。
けれど、蓑輪さんが教えてくれたことは、「自分が大切だと思ったことは、妥協なくやる。信念をもって貫徹する」ということだ。自分を振り返ざるを得ない蓑輪さんの半生とエピソードだった。
さて、自分が「12の大切なこと」を作るとしたならば、どんな内容を入れるだろうか。
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