子どもを子どものままにしていませんか? 『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』より

大人のための読書記録

『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』から12月からの暮らしと政治ユニットを考える

政治・憲法ワークショップのイメージ

社会科ワークショップを実践しています。今は歴史家ワークショップですが、そのうち政治と憲法ワークショップにも入っていこうと思っています。

歴史を作家の時間のようなフレームでワークショップにするのは、完璧でないにしても基本の型のようなものが分かってきました。

けれど、政治や憲法などの分野で、どうやったらワークショップが可能なのか、今のところイメージはさだまっていません。

Tumisu / Pixabay

模擬選挙に挑戦したい

今、中学校の先生と企画をして、模擬選挙をやろうと思っています。経験のある中学校の先生がサポートしてくれているので心強い。まずは、候補者も政党も架空のもので、挑戦してみようと思います。

できるだけ、本物に近いものにしたいのですが、やっぱり、本物の政党の名前やマニフェストを使うのは、すごーく面倒なことに巻き込まれそうな予感がする。

(おそらく、ここの教師の心の問題をしっかり向き合って解消していかないと、本当に子どもたちの政治参加意識が高まることはないんだろうと思います。)

調べてみると、模擬選挙にもいろいろな形があって、中・高生の間では実践はたくさんありそう。

模擬選挙

『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』

そんな中で、この本と出会ったので、これからのユニットの構想などをイメージしながら読んでいました。

スウェーデンの社会科教科書の特徴を自分なりにまとめてみると

日本では法律や規則は大切というスタンスを貫くのに対し、スウェーデンは自分たちの手で法律や規則は変えることができることを強調する

日本ではメディア(5年の内容)は政治(6年の内容)と切り離して教えているのに対し、スウェーデンはメディアと政治との関連性について深く問うている

日本ではメディアの扱い方を有害な情報から身を守ることを中心に扱われるが、スウェーデンはフェイスブック・ツイッター・インスタグラムの違いを教えるなど、民主制を支える道具として教えている。

日本では、ほとんど扱われていない社会問題も、スウェーデンでは、離婚やいじめなど子どもが直面する問題を社会科の教科書で扱っている。

所得格差や消費者の責任(買うという行為の意味、世界への影響)など経済的な内容も、小学校段階で教えている。

日本は日本国憲法から教えていくが、スウェーデンでは自国の憲法と同等以上に、世界人権宣言や子どもの権利条約などの国際法を大切にしている。

日本の社会科教科書と位置づけが大きく違い、驚きです。

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子どもを自立させようとするスウェーデンの社会科

スウェーデンの教科書は、子どもがしっかりものを考え、世界に暮らす一人の人、国に暮らす一人の人として、自立に向けて成長してほしいという目的で作られているように思います。

社会問題の表現の仕方も、しっかり現実を説明し、それに向けてどのように行動をしたら良いのか、正解のない問題提起に自分なりの考え方を示せるように育てていっています。

子どもたちは、参政権を持たないうちから、学校の中で自分の考えを表現しなければなならない機会をもらい、学校という守られた環境の中で懸命に考え、表現し、友達と討論を重ねていくのだと思います。

様々な意見のメリット・デメリットを考えながら、世界のために、スウェーデンのために、自分の考えを表現している子どもたちの様子が自然と想像されます。

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子どもを子どものままにしようとする日本の社会科

知識・理解的な側面の大きい日本の社会科の教科書。問題提起をするよりも、内容を習得させたり、地図や表を読ませたりすることに重きが置かれています。

せっかく教科書の中で良い問題提起がされていたとしても、答えらしきものが教科書の中で示されていたり、現実の社会と直結していなかったりします。

例えば5年生で農業や漁業をやっても、終末は「工夫や努力をしている農家や漁師のみなさんに感謝をして食べる」程度の考えに収束して、農業や漁業の制度自体をクリティカルに捉えたり、議論できたりするレベルにまで到達しません。「感謝して食べよう」では、現状の維持だけで終わります。

それは、教科書がそういう結末になっているので仕方がないのかな。僕としては、安すぎる魚や農作物の問題とか、環境負荷の問題など、子どもたちと一緒に議論して、一人ひとりが自分の考えを持てるような学習をしていきたいです。でも、結果的に終末にテストとかあったり成績をつけなくてはいけなかったりすると、ついついそれを意識して、そちらの方に時間をかけてしまいます。

どこか政治に意見をすることや、子どもたちが政治に介入することを恐れている教科書会社、そして教育全体。それでは、自分たちが政治の主人公であることに気づける子どもを育てられません。

どうも、スウェーデンの教科書よりも、日本の教科書は、子どもを子どものままにしようとしている感じがしてしまいます。

「きまりは守りましょう」

「大人に感謝しましょう」

「教えたことを覚えましょう」

学校教育を通じて、どんな子どもを、どんな未来の大人を育てたいのか、その根本が違うのだと思いました。

1103997 / Pixabay

 

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