共育の杜で紹介を頂いた『データから考える教師の働き方入門』ですが、横浜の学校現場の実際が数値となって事例で紹介されているので、面白く読ませていただきました。
働き方改革がモヤモヤする原因を4つにまとめています。
- 自分たちの働き方が勝手に変えられていくこと
- 働き方改革が教職員間の対立のタネになっていること
- これまでの「いい教師」像とのズレを感じること
- (働き方を変えようにも)どうすればいいのかわからないこと
どれも確かにと頷きます。先生の働き方改革は、ジェンガに例えられています。学校は、複雑に積み重ねられたブロックのように様々に影響し合い、入り組んでいます。ある仕事や分掌を、無くしたり変えたりしたときに、それが学校の根幹を揺るがすことになってしまったり、もしかしたら、学級や学校の秩序を崩壊させることにつながるかもしれない。地域からの信用を失墜させてしまうかもしれない。とても慎重にならざるを得ません。
調査により長時間労働をする教員に特徴的な姿が見えてきたそうです。まず、子育て経験なしの働き盛り男性教員は、長時間労働が多いそうです。まさに、若い頃の自分自身です。別に体育会系な訳ではありませんでしたが、自分の納得のいくまで、自分の時間を子どものために使っていました。特に後悔はしていませんが、このタイプをスタンダードにしてしまったり、依存してしまったりすると、教員はどんどんブラックになってしまいます。
さて、他にもタイプがあります
- 完全燃焼タイプ
- 不安憂慮タイプ
- 何でも屋タイプ
これって、全部同じようなタイプを示しているようにも思います。不安だから、完璧になってしまう。自信がないから、子どものために何でもやってしまい、他の先生の依頼を断れなくなってしまう。自信がある人が、他者に対して高慢になり、尊重できない。自信のない人が、他者に甘えて依存するしかない。もともと、教室の中で一人で担任を任せられてしまうことによる、不安の高まり、自信のなさが、このような極端に自信のない教師や、極端に自信過剰な教師を生み出してしまうのかもしれません。(全てブーメランにのように自分に跳ね返ってきています。)
筆者は、不安憂慮タイプに有効な方策として、有名なKolbの体験学習サイクルを引用し、「振り返り」の大切さを主張しています。例えば、振り返りの時間がある教員の群は、そうでない群と比較すると、「不安を感じている」教員が7.5%少ないそうです。また、アドバイスし合う時間があると答えた群の方が、アドバイスし合う時間がないと答えた群よりも、不安感が少ないというデータもあります。
「振り返り」と書いていますが、具体的にどのような振り返りを示しているのかまでは本書は提示していません。僕は「振り返り」という作業が非常に苦手で、「仲間の先生と話す」というような、相手のいる活動に落とし込まないと振り返るというモチベーションを維持することができません。そう言った意味で、この「ブログに書く」という活動は、誰かがこの文章を読んでくれるという妄想を立てることで、擬似的に相手を作り、振り返れる。一人の作業で「振り返り」ができる人を、僕は尊敬します。
働き方改革の具体的な取り組みとしても、類型化して示している。
- 外科手術
- キャップ系(定時退勤日・一斉消灯・労働時間を強制的に減らす)
- カット系(行事や会議の精選・業者委託・業務をやめる)
- 効率化系(資料や教材の共有・レイアウトや動線の工夫)
- 漢方治療(組織文化を変える、意識の改革など)
外科手術だけでも、いろいろな系統を組み合わせて使う方が良いそうです。けれど、どこの学校でも、すでに取り組まれているものがほとんどではないでしょうか。根本的な解決は、「人」です。そこを回避するための外科手術や漢方治療であれば、外科手術を執刀する人が苦しくなって、結局働き方改革の逆流性食道炎状態になるように感じます。
横浜市は教員の労働時間は減ってきているものの、精神疾患で休職する先生の数は、逆に増えているという話も聞きます。社会が学校に求める要求は高まるばかりで、それに対応する「人」は反比例して減っています。持続不可能な状況です。
ファクトを積み重ね、「人」を増やしていく以外に方法はないと思います。
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