教師がストーリーテラーになる 5つのスタンスを身につけるための2番目の方法

A Mindset for Learning
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第7章 ぱっと読める?ダイジェスト

5つのスタンスを身につける方法として、2番めに登場したのは、ストーリーテリングでした。(ちなみに、1番目はセルフトーク)

セルフトークフレーズ集(トミーの超意訳)

物語は、歴史的にも、脳科学的にも、子どもたちが世界を知り広げたり、自分を深めていったりするために、効果のある方法です。

物語とは、童話や本の読み聞かせに限りません。子どもたちの日常の生活から、ストーリーを発見し、それを教師が物語として紡いで(脚本化して)子どもたちに語り聞かせるほうをメインとしています。

文脈をたっぷり含むことができる物語という道具

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物語には、子どもたちの生活経験の文脈を載せやすいですし、感情を揺さぶることができます。「Persistenceとは、Empathyとは」と子どもたちに話しても、抽象思考が未発達な子どもには、無理がある。それを、物語という形式を利用することで、シェアしやすい形に調理し、受け渡していこうとする試みです。

たしかに、物語は回りくどいですし、時間もかかる。教師の立場からすれば、率直にぱっと言葉にして教えたいところですが、それでは、生の食材をそのままガジガジと子どもたちに食べさせるようなもの。物語化することで、抽象的で難しいことも、食べやすくなります。物語化することで、回りくどいようですが、結局のところ、子どもたちには消化吸収が速いのだと思います。

ライティング・ワークショップで物語を制限していいの?

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思い出されるのは、僕のライティング・ワークショップの実践は、物語を制限しているということ。子どもたちが紡ぐ物語は、なかなかに難解で、保護者(特に友達の保護者)がそれを読んでも、理解できないという点で、物語を制限していました。けれど、この物語のパワーを読むと、物語には子どもを成長させる力があり、保護者や先生こそが、子どもたちのパワーの詰まった物語を受容する寛大さを身に着けなければならないのかもしれません。大人力が問われますね。

「読みにくい物語にこそ、子どもに力を与える何かがある」

7章の小学校1年生の実践の概要

カット先生がエラさんが「スーパーヒーローのすべて」という本をがんばって書いていること(これはライティング・ワークショップ)を、物語化して子どもたちに聞かせるという実践。スーパーヒーローという長い単語を深呼吸しながら、ゆっくりとスペルをねばり強く書いていく物語を、先生が劇画的に物語っていく。何度も何度もスーパーヒーローの綴りに挑戦するエラさん。先生はエラさんからヒーローインタビューのように引き出していく。「できる!うまくできなくても、またやれば、きっとできる!!」(これが前章のセルフトーク)そして、聞いていたクラスメイトが叫ぶ。「エラはpersistenceを使ったんだ!!」先生は対話の時間を作った後、「パーシスタントなみなさん、算数パートナーで座って、続きの話をしましょう。」

この実践が、すべてを物語っているように思います。

 

以下は時間と興味のある人のみ

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7, Storytelling. Harnessing the Power of Narratives to Shape Identity

 

Turning the Feelings That Break Us into the Stories That Make Us

Storytelling and Identity

On the flip side, if you hear and tell stories that help you see yourself in positive ways, you will carry those stories with you and begin to tell your own stories of optimism.

 

子どもたちは物語を通して世界を知り、自分を形作っていく。それだけ幼少期の物語は、世界を広げることや自分を深めることに貢献している。だからこそ、その物語が子どもたちの中のポジティブ思考を成長させることにつながるし、物語を通してオプティミズムを育てることもできる。

後の事例を考えると、ポジティブな童話を選りすぐって聞かせるというのではなく、子ども自身の体験や身近な人の体験から、5つのスタンスを織り込んで物語にしていくという感覚ですね。

最初、物語を童話と同義で読んでいたので混乱していたのかもしれません。

 

Understanding good news has its own neural pathway, like learning to read. People need experience with good news to understand it. When children repeatedly hear stories with resilience, empathy, flexibility, and agency at their core, they grow the neurons that help them find those same stances in novel situations, just as they build the neural pathways of self-talk that we described in Chapters 5 and 6. Children without such experiences do not have the same brain pathways that allow them to know such interpretations exist.

 

これを改めて読むと、虐待やネグレクト、子どもたちの貧困を思い浮かべてしまいます。良いニュースを良いニュースとして受け取るためには、それに反応できる神経回路が必要で、そういう回路を鍛えてあげなければ、良いニュースを良いニュースとして受け取ることすらできないという意味です。養育環境が厳しい子どもは、良いことも、良いこととして受け取れない、幸せを幸せとして受け取れないということは、本当にかわいそうなことだと思います。逆に、普通の家庭でも、過保護や厳格に育てている家では、良いニュースで幸せを表現できない子もいるかもしれません。

 

This time, instead of passing judgment, the teacher inquired about the sequence of events and helped write a different story. “Trying to build something big and ambitious together and having it fall doesn’t mean it is ruined; it just means you have to work together to find a better way. It makes sense to be sad and frustrated that it fell, but after you feel that way for a little while you can try again in a different way, now that you are a little wiser.”

 

学校では、トラブルが起きると、事実関係をしっかり捉えて、ともすると、そこから教師が善悪を判断して裁決をしてしまいがちです。上のように、「又聞き」も多く、事実関係が良くわからないことも少なくない。でも、小さなトラブルなら、この先生の言葉がけのように、ポジティブな方向に運んであげて、子どもたちに違ったストーリーを示してあげると、気持ちが切り替えられますね。先生自身のマインドセットが大きく影響するように思います。

 

This Is Your Brain on Stories

“Stories are easier to remember because in many ways, stories are how we remember” (2005, 101). Since the earliest reaches of time, we have used stories to communicate information to one another. Why this works, Pink argues, is because stories contextualize facts and provide an emotional element (112). In other words, they integrate the whole brain.

 

文脈と離れますが、子どもは物語を通じて、世界を捉え、自分を認識している。だからこそ、日常の子どもたちの切り取り方も、物語にしてあげて、そこに価値を盛り込み、子どもたちにシェアをする。先生がストーリーテラーになるという発想は新しいです。「読み聞かせ」の新しい境地なのかもしれません。

 

そもそも、(縄文時代の?)ストーリーテラーは、現実に合った物語を、切り取って、聞きやすいように加工して、物語を紡いでいるはずです。それを、教師は日常のクラスの事実を切り取って、物語にしてあげればいい。そうやって、価値は伝わっていく。それは、教師がストーリーテラーになるという発想なのだと思います。

 

STORIES AS GUIDES: RESEARCH INTO HOW STORIES INFLUENCE US

when people listened to a sad story about a terminally ill two-year-old and his father, their brains responded by releasing two chemicals: cortisol and oxytocin. Cortisol is a chemical that focuses our attention on something important and, in this case, directly correlated with people’s sense of distress after hearing the story. Oxytocin correlated with people’s sense of empathy.

 

ということは、やはり、ポジティブでオプティミスティックな話ばかりを選りすぐって聞かせるのではなく、悲劇的な話も織り込んで聞かせていくことに効果があるということですね。物語と脳内物質の関係というのがおもしろいです。

 

Using Class Shares and Meetings to Create Positive Personal Narratives

Research has found that people who watch television with a great deal of violence are more likely to believe that they will become victims of violence (Perry 2009, 101).

 

びっくり。

 

Storytelling does not need to be elaborate or incorporate fancy props. As you will see in the following peek into a first-grade classroom, employing a few simple techniques to increase engagement is often all it takes to make a story memorable and have children request it again and again.

 

まさに、教師がストーリーテラーになる、読み聞かせならぬ、語り聞かせ?

 

Storytelling About Success Through Persistence: Window into First Grade

カット先生がエラさんが「スーパーヒーローのすべて」という本をがんばって書いていること(これはライティング・ワークショップ)を、物語化して子どもたちに聞かせるという実践。スーパーヒーローという長い単語を深呼吸しながら、ゆっくりとスペルをねばり強く書いていく物語を、先生が劇画的に物語っていく。何度も何度もスーパーヒーローの綴りに挑戦するエラさん。先生はエラさんからヒーローインタビューのように引き出していく。「できる!うまくできなくても、またやれば、きっとできる!!」(これが前章のセルフトーク)そして、聞いていたクラスメイトが叫ぶ。「エラはpersistenceを使ったんだ!!」先生は対話の時間を作った後、「パーシスタントなみなさん、算数パートナーで座って、続きの話をしましょう。」

Moving from Idea to Action One story

To make the biggest impact, we have to hold ourselves to a commitment of telling stories about the children in our class daily.

子どもたちに相手に関心を寄せる眼差し(好奇心、相手への関心)で日頃のストーリーを紡ぐことができるかどうか。教師の記録力とセンスですね。

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