コントラクトでワークショップの設計を一緒に共有する

社会科ワークショップ
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コントラクトでワークショップの設計を一緒に共有する

昨日は社会科ワークショップでした。トミーをご存じの方はわかると思うのですが、いつもはボケーッとしているのですが、突然何かに取り憑かれたように饒舌に語りだすので、とても扱いづらいです。昨日は、コントラクトでワークショップの設計を子どもと共有するということに、熱くなってしまいました。

だから、書きます。

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参考文献

『「考える力」はこうしてつける』 第4章 交渉

 

『ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方』 第8章 一人ひとりをいかすもっと多様な教え方

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陥りがちな失敗

リーディング・ワークショップやライティング・ワークショップ、はたまた社会科や理科のワークショップに取り組む際に、陥りがちな失敗は、「子どもたちの学習が散らばりすぎて教師が説教する」ということです。

子どもたちは、大人のように察してはくれませんので、テーマを設定しても、学習にのめり込むうちに、いつの間にかテーマを逸脱してしまったり、そもそもテーマを理解できていなかったりします。

ライティング・ワークショップの場合、ユニットは形式で区切られることが多いので、子どもたちも理解しやすいです。今月は「詩」と言われれば、大体の子は分かります。リーディング・ワークショップも、「海外の作者の絵本」と言われれば、大体わかります。

けれど、「いろいろな国の作者の絵本を多読する」とした場合、「いろいろな国」とは何カ国ぐらいなのか、「多読」とは何冊ぐらいなのか、先生の意図がユニットのテーマだけでは不明確になります。

そして、テーマが具体的になればなるほど、先生から「無理やりやらされている感」が増していきます。「ゆっくり読みたいのに…」などです。先生たちががんばってデザインした学習構造も、子どもたちがオウナーシップを持てないと、とたんに崩れていってしまいます。

特に、社会科や理科、算数などの内容が決められている教科のワークショップの場合、指導要領に基づいた学習をさせたくても、子どもたちがまったくちがうテーマを選んでしまって、学習のコントロールができなくなるのではないか? という心配も聞きます。

そこで、コントラクト(契約)を使うことが有効であると考えるわけです。

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ユニットデザインに欠かさせないこと

ユニットの設計をする際に、欠かせないことは、目標・評価・内容・方法・計画です。そして、子どもたちは、ワークショップの中で、何を選べて、何は選べないのか、どこからどこまでが学習エリア(学域)なのか、を知っておく必要があります。そうでないと、せっかく頑張って取り組んだのに後から修正を求められたり、うまく評価されなかったりするからです。

目標

子どもたちの学習が目指すものです。プレアセスメントでの子ども理解、指導要領、教師や学校の強み、などを総合的に考えて、目標を設定します。これは子どもは選べません。

評価

何ができたら花丸なのかを決めます。教師と子どもが一緒に作る場合もあります。その方が評価基準を子どもたちと共有できるからです。子どもと共有する意味でも、規準では分かりにくいので、基準(どうすれば次のステージに上がれるのか)を情報共有できるといいです。

内容

ワークショップなので、ここは子どもたちが選べる設計が多いです。ただし、学域をしっかり明示します。「ごみ」なのか、「リサイクル」なのか、「自分たちのできることを提案しよう」なのか。

方法

これも、ワークショップの特性上選べることが多いですが、限定することも可能です。本は何冊以上読むのか、一人でやるのか、ペアでやるのか、アウトプットは、レポートなのか、プレゼンなのか、選べるのか、などなどのガイドラインです。

計画

いつからいつまでやる、中間発表がある、提出期限がある、などの時間的な情報です。もしくは、◯◯時間もっているという表現もできます。

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ガイドラインとコントラクトの違い

ガチガチ教師主導授業の場合

上の5つの情報は子どもには開示されません。ですので、教師の指示のまま子どもたちは学習を進め、指示をよく聞けないと叱られます。子どもたちは、全員均一な状態を求められます。学習のプロセスの個別化やマルチプルインテリジェンスなどは、認められていない状態です。人権侵害。

ガイドラインの場合

学習のはじめに、上の5つは子どもに公開されます。なので、子どもたちは、先生の意図を文面上でも捉えることができ、自分たちの自由はどこにあるのか、先生は何を求めているのかが明確になります。その分、子どもたちは見通しがもてるので、学習のどこに力を入れたいか、プランをたてることができます。むしろ、このプランを立てる能力を鍛えることに、とても価値があります。

けれど、先生から提示された枠組みなので、ユニット自体にオウナーシップは感じづらいです。自由度を増せばそれだけオウナーシップは増すかもしれませんが、目標からズレてしまいやすくなり、ぜんぜん違うことをしているというリスクが高くなります。

コントラクトの場合

基本的な要素はガイドラインと大差ありませんが、子どもが選択したり(Choice Board)、子どもが決定したりする余白があります。そして、先生と子どもがカンファランスを通じて学習のアウトライン(5つの要素)を決定し、お互いにサインを取り交わすことで、コントラクトが完成します。

コントラクトは、ユニットの間、指針になったりタスクリストになったりしますので、ポートフォリオやジャーナルにしっかりと保管されます。先生がカンファランスに入る際は、このコントラクトに基づいて、学習の進捗状況のカンファランスをします。ユニットの地図、登山計画書の位置づけですね。

ガイドラインよりも、子どもたちが自分の学習の設計に、直接携わっているので、学習のオウナーシップが高まります。学習は、先生が教えるものと言う位置づけから、自分で開拓していくもの、というスタンスが身につきます。

学習を自分の強みを生かしたものにするために、教師との交渉力が身につきます。自分のマルチプルインテリジェンスを意識し、自分の強みに引き寄せた学習設計を自分自身で行うことができる余地があるので、教師との交渉がとても大切になります。学習は決められたものではなく、自分自身で設計できるものという認識になり、責任を引き受けることにもつながります。

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コントラクトのデザインを考えることが、ワークショップのデザインを考えることになる

ということで、コントラクトがしっかりデザインできれば、ワークショップもしっかりデザインできているということになると思います。指導案を書いているより、コントラクトを書いていたほうが、子ども主体の学習を設計できるのではないでしょうか。教師が情報を閉ざして、学習の主導権を握るよりも、ディセントラライズドされた、分散的な学習が可能です。コントラクトによって、より客観的に自己評価も可能になるでしょう。

学校で学習デザインをする場合、コントラクトを活用してはいかがでしょうか?

こんな話を、社会科ワークショップでしました。

契約って知ってる? Differentiated instructional strategies chp.7 PART4

 

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