7、考察
○ 成果
l 友達と読むことで、読書が苦手な子も読むきっかけとなった
友達との協同学習により、ピアサポートが生まれ、読書に疎遠な子も読書を楽しむ推進力になった。「ここまで読んでこようね!」「おれの質問これだからね。」と、お互いの読書状況を確認し合う状況が生まれ、読書会を楽しむためにここまで読みたい、こんな読書会がしたいと、読書を通じた友達との相互学習が生まれている。
一方で、ピアプレッシャーを感じている子もいると考えられるので、全体の読書活動の中で負荷がかかりすぎないようにバランスをとっていきたい。
l 同じ作者を読むことで、作品同士のつながりに気づくことができた
5種類の岡田淳の作品を読み、グループの読みを可視化・共有することで、作品同士のつながりや作者の意図について気がつけるようにした。1種類の本を読み、なおかつ、他の4種類の読んでいない本とのつながりを見つけることは、4年生には難しいかと思われたが、自分が選んだ本の読みを中心に他の本との物語の類似点やテーマ性の重なりなどを発見し、作者岡田淳が大切にしていることについて、話し合うことができた。全体授業での共有になったので、次回は一人ひとりの子がその本のテーマやその作者の考えについて、複数の本から考えを深められるようにしていきたい。
l 読書会の後も岡田淳作品を読みたい子が後を絶たなかった
第1回の読書会では『ナルニア国物語 ライオンと魔女』1種類のみだったので、子どもたちの中に選択の余地がなかった。今回岡田淳作品の中で選択肢を設けたので、他の班が読んでいる物語について非常に興味をもっていた。読書会が終わっても、岡田淳作品を読み進める子が多くいて、図書館の本をもうしばらく借りて読む時間を作ったほどである。教師のブックトークよりも、友達の「おもしろかった」の声の方が、読書意欲をかきたてる力をもっている。
○ 課題
l 自ら学習を進める子どもへのステップを明確にする
第2時の読書会で教師の質問を用意したが、それはほとんど学習の効果がなかった。教師の思考で作られた質問は、子どもにとっては意味をもたず、やはり、自分の読みで反応した所を共有したいという気持ちの方が強い。読みは個性的なものであって、他者の解釈や理解を押しつけてはいけないということへの再確認になった。
けれども、自ら学習を作る(自立的に読書会を運営する)ためには、スモールステップを踏まなければならない。今回、教師の質問は狭い範囲での答えを要求するような色が強かったことが反省である。話し合いの土台づくりへの支援として、「好きな登場人物は?」「主人公は成長した?」「筆者が伝えたかったことは?」などの、よりオープンな問いを補助とし、私の目指す子どもの姿である自立的に学習する子を育てていきたい。
l コンテクスト(行間・背景・心象・意味・文脈)を多く含む本を選ぶ
岡田淳の作品にも個性がある。話し合いが活性化するためには、ある程度コンテクストを多く含む作品を選ぶべきである。私の主観であるが、『ふしぎな木の実の料理法』は、主人公の行動やその理由、心情などがしっかりと描写されていて、岡田淳の入門的な感想をもった。一方で、『竜退治の騎士になる方法』は、けして文章量は多くないが、そこに示された意味はとても豊かなように感じる。詳しく描写されていないと、疑問や考えなど読者の解釈が入る余地ができ、本への反応を生みやすい。教師は読書会での選書の際には、よりコンテクストを多く含む本を選ぶべきであると考える。
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